public:発表のお作法

発表のお作法

いわゆるプレゼン資料と発表の仕方になります。ネットで検索すればたくさんでてくるのであえてここで言う必要もないのですが、前提知識と基礎を共有したいので、ここに記載します。

「発表する = スライドを作る」と盲目的に思っていませんか?

スライドをなぜ利用するのかを考えましょう。スライドが発表資料として多用される理由は下記のとおりです。

  1. 口頭だけでは伝えるのが困難な図、表、グラフ、動画を利用できる
  2. 要点を抑えたテキストで聴衆の理解を助ける

つまり、上記の内容が実現できるのであれば、必ずしもスライドを利用する必要はありません。時と場合によっては模造紙やホワイトボードで事足りることもあります。学会発表などで、スライドを利用しながらソフトウェアのデモを同時に行うことで、切り替えに時間がかかったり、画面があちこちに飛ぶことでで無駄な情報を提示してしまうことも多々あります。

何も考えずに、「発表だからスライドを準備しよう」と思っていたら危ない!

発表をするにあたって、鉄則があります。それはどのような発表形式がよいかに関してです.スライドを作成すると思わずテキストで箇条書き、みたいなことをすぐに考えてしまいます。これは誤りで、テキストが資料を作成しやすいからにほかなりません。資料を作成するにあたり、次のことを鉄則として頭に入れておきます。

最も効果的なのはデモすること。次に効果的なのは動画でみせること。次は画像を利用する。デモ・動画・画像で示せないものはテキストで示す。

つまり、

  1. デモ
  2. 動画
  3. 画像
  4. テキスト

の優先度となります。日本語でデモというと、実演といった意味になってしまいますが、Demonstrationには「証明する」という意味があります。デモができるということは、あなたの作品・研究がたしかにそこに存在しているという証明にほかなりません。

一方でデモでは伝わらない場合ももちろんあります。実験結果を示したグラフや、デモでは示しきれない大きな構想等です。どのようなスライドが最もよくあなたの考えを伝えることができるのかを常に意識してスライドを作成してください。

いうまでも無いですが,ですます調で,タメ口はいけません.英語での発表は気にしなくてよいです.

誰だって早口で話を聞かされたら疲れてしまいます.「内容が沢山あるのに,時間が短いせいだヨ!!」と反論したくなる気持ちをぐっと抑えて,「決められた時間で如何にして相手に情報を伝えるか」これをしっかりと自分で考えましょう.早口で話すことがあなたにとって最適解であるならそれも一つのやり方です.一方でアナウンサー等の「しゃべり」を生業としている人たちの間では,「1分間に300文字」がもっとも相手が理解しやすいスピードであると言われています.実際にこれを実験して調べた論文もありますが,例えば以下の動画を見てください.300字程度がたしかに聞きやすいなと感じることができると思います.

ご自身の話速を測定する方法として馬場が作成したアクセシブルスピーチトレーニングを一度使ってみてください。きっと発見があるでしょう。

早口でたくさん喋ってもそれが相手に伝わらなければ意味がありません.また発表聴講者の中には聴覚障害を持つ人がいるかもしれません.早口で喋りすぎては現場の手話や文字起こしが間に合わない場合もあります.また話者の発話速度や声の高さは発話者の性格印象に影響を与えることもよく知られています(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy1926/75/5/75_5_397/_pdf).落ち着いてしゃべることを心がけましょう.

発話声量は 5[m] 先に相手がいることを想定して,話してみましょう.手元にマイクがある場合も同様です.大きすぎてもびっくりしてしまいますし,小さすぎても聞き取ることが困難です.

フィラーとは「えー,まあ,そのー」等といった文章の合間に入る基本的には意味のない語句のことです.接続詞や助詞,副詞などが多いですが,これらの語彙は聴衆に対して無駄な情報を提供することなので,意識してフィラーが入らないようなスピーチを心がけましょう.

スライドの作成枚数ですが、一枚のスライドに1分程度を目安で考えてください。

プレゼンテーションソフトでは発表者用原稿と言って、発表中に発表者だけが閲覧可能なテキストを準備できる機能があります。またはこのような機能を利用しなくても、紙で事前に原稿を用意しておくことも可能です。しかしながら、事前に用意した原稿を見ながら発表をしてはいけません。「そんなこと言ったって、数値や間違えてはいけない文言とかは覚えられないよ!」という人もいると思いますが、統計的な数値や、間違えてはいけない事柄に関してはスライドに表示すればよいです。一度原稿を読んでプレゼンすることに慣れてしまったら、原稿なしで発表することが困難になってしまいます。これは非常に危険なことです。失敗しても構いませんので、とにかく原稿を読みながら発表をすること自体をやめてください。プレゼンテーションは一つのパフォーマンスです。パソコンを見てただ原稿を読み上げているだけであれば、動画を流しているのと一緒です。会場の反応に対応したり、会場の空気に合わせながら即興的に言葉を紡ぐ訓練をしましょう。

発表資料を作成する際,「あの人のやり方面白かったから真似してみよう」,「あのやり方わかりやすかったから真似しよう」と考えて他人のスライドを真似することがよくあります.これは構いませんが,「みんながやってるから真似してみよう」はダメです.哲学のない真似は猿真似です.常識を常に疑ってください.そして自分なりに「このやり方は〇〇の場合にわかりやすいから真似しよう」と,一つ一つに理由を持ってスライド作成をおこなってください.例えば以下に2つの例を載せます.

例.1 「ご清聴ありがとうございました」というスライド

質疑が活発になって、聴衆が静かに聞いていなかったらどうしますか?そもそも静かに発表を聞くのが良いのでしょうか? もしあなたがなにも考えずに最後にこんなスライドを入れているのであれば、そのスライドはなんの哲学もない無意味なスライドです。 今すぐ削除してください。仮にスライドの最後であることを示すために入れているのであれば、それは「以上でスライドは終わりです。質問を受け付けます。」で良いはずです。

一方で実際に静かにしていないとわからないプレゼンの場合、例えば音楽を制作した場合や、耳を済ませる必要がある映像や作品等、このようなスライドがあっても良いかもしれません。

例.2 最初にスライドの流れを説明すること

しばしば見かけるスライドとして、発表の冒頭部で発表の流れを事前に説明することがあります。これは、発表時間が30分程度の比較的長めスライドの場合には有効に機能することがあります。一方で10分や15分程度であれば、そのようなことを説明しなくとも研究のストーリーがしっかりと頭に入ってくることが重要です。裏を返せばそんなに長くもない発表時間にもかかわらず、このような説明を付け加えるということは、「私のスライドの流れは分かりづらいです」と言っていることになります。それは発表者の努力不足です。

それでは次は体裁についてです。PowerPointやKeynote等の多彩なテンプレートを利用すれば、見た目を容易に華やかにできます。しかしながら、ここでも一歩下がって、なぜそのような体裁をとるのか?という問を忘れないでください。一つ一つの体裁に対してデザイナとして意味付けがしっかりとできているかをまずは意識してください。

背景色

一般に背景色は白や黒がよく使われます。ただし意味もなく使ってはいけません。まずは下記を抑えてください。

  • 白:発表する会場が明るい場所である場合
  • 黒:発表する会場が暗い場所である場合

ただし、制作したコンセプトカラーに合わせて背景色を変更することもあると思いますが、その場合も見る人が見やすい配色になっているか?会場で見た場合に見づらくならないかを忘れないでください。

フォント

  • サイズ
    • 相手に必要な情報であるにもかかわらず、読めないような小さなフォントサイズはNGです。ただし、参考文献やデザインスケッチ時等のあまり情報として重要でない場合は小さな文字を使ってもよいです。原則は20pt以上のフォントを使ってください。
    • 背景色に合わせて読みやすいコントラストになるように調整してください。
  • 種類
    • 基本はゴシック体とします。ただしデザインイメージ等の理由があれば明朝体、serif等も利用して構いません。このあたりはアートの学生なら問題ないと思いますが、見出しはゴシック、文章は明朝が基本に変わりはありません。スライドの場合はほとんどが見出しになるので、基本的にはゴシック体となります。
    • 当たり前のことですが、フォントの強調表現として、太字表示がありますが、太字の場合は必ずそのフォントファミリーのウェイト変更で太字にしてください。間違ってもOfficeなどについている太字ボタン等は使わないでください。同様にイタリック体も。デザインされたフォントを使うよう、気をつけましょう。

図表サイズ

図表をスライドの中で紹介しているが、小さすぎてなんだかわからない。といったことが散見されます。図表をスライドないで扱う際は特に十分に大きなサイズでスライドに載せることを意識してください。例えば論文で使用した図表をそのまま使うとフォントサイズが小さすぎる場合がよくあります。その場合は面倒でも図の作り直しや、テキストだけでも必要な箇所は打ち直すなどのひと手間を加えてください。

アニメーション

PowerPointやKeynoteにはアニメーション機能があります。もしあなたがこのようなアニメーションを「なんとなく」「動きがあっておもしろいから」という理由で使っているのあれば、即刻アニメーション機能を使うことをやめてください。ここまで述べてきたことと同様にアニメーションにする意味がないのであれば、アニメーション機能を使う必要はありません。では意味のあるアニメーションとはどういうことでしょうか?

  • 空欄になっている箇所に対し、聴衆に問いかけながら答えをそこに表示する
  • 背景の話や関連研究の話がすんで、実験や実装の話になる場合にそのスライド切り替えだけフェード等のアニメーションにする

といった場合などは、意味のあるアニメーションと言えます。

  • public/発表のお作法.txt
  • 最終更新: 2024/01/18 13:32
  • by baba