public:ai時代の研究サーベイ方法

ai時代の研究サーベイ方法

このページでは,AI時代における論文や研究のサーベイ方法を紹介します.紹介するサービスは乱世浮沈のAI技術業界の観点からリンク切れや大幅な変更が生じている可能性がありますのでその点は予めご理解ください.

このページで述べていることを一言で言えば,「英語論文を自分で探して,関係ありそうな論文をどんどん読むための誰にでもできる具体的プロセス」です.論文サーベイ思考法です.

論文は英語で読むものです.日本語の論文を頑張って検索することは無意味とは言いませんが,例えば佐藤[https://www.jstage.jst.go.jp/article/inforum/if39/0/if39_0_000003/_pdf/-char/ja]によれば,世界のジャーナルの中で英語が占める割合は2000年の時点で82%であり,日本語は4.3%です.だいぶ古い情報ですが,現代では更に英語の利用率が情報していると考えられます.つまり,日本語の論文は世界において,数%(しかも a few 以下の可能性が高い)です.「自分が読みやすいから」という理由だけでもし日本語論文を探しているのであれば,それは非常に非効率的であるというのがわかると思います.

「でも英語論文に目を通すのは時間がかかるので,非効率てきじゃん? そしたら一旦日本語論文を読んでさ,それでジャンルを理解してから...」という脳内ニューラルが反応した人もいるかも知れません.20年前だったら一理あるなと思いますが,現代においてこれだけ機械翻訳の精度が向上し,さらに翻訳ツールのユーザビリティが向上している現代においては,非効率的な考えであると理解してください.例えば

  • ブラウザであれば標準でページ内の英語を日本語に変換してくれます.
  • PDFであればDeepLやChatGPT等で日本語に翻訳してくれます.

ここまできても,「でも,読む量って結構あんじゃん?わたし文章読むの苦手なのよね」という脳内ニューラルが発火した人もいるかも知れません.安心してください.AIを使いましょう.2023年11月29日現在,ChatGPTのPlusプランであればpdfを渡して簡単に要約や,教えてほしいことを対話的に知ることができます.例えば英語の論文PDFを添付してGPTに「この論文の新規性とその新規性の根拠を教えて」とするだけで,新規性に関する内容を把握することができます.このPDF要約機能はBing AIでも利用できますので,こちらであれば無料で利用できます.

ということで,ここまでの流れをまとめると,「論文は英語を(日本語に翻訳してもいいので)読む」,この意味と手軽さを理解していただけたと思います.

これは近年のD.A.Normanがよく言っている言葉で,知識獲得を目的とするのではなく,知ること自体を目的とする手法のことです.このページを読んでいる学生のみなさんの中には,論文調査って,そもそも指導教員がよく知っているジャンルだろうから,先生がいろいろ教えてくれればいいのでは?と思っている方もいるかも知れません.その考えは半分はGoodで,半分はBadです.研究を始めた最初の頃は指導教員から「これ読んでみよう,あれ読んでみよう」ということがよくありますが,これは知識の一方的享受となり,本来の「知る(knowing)」という知的探求行為とは異なります.例えば教員から示された論文を読んだとします.すると関連研究のsectionに示されている論文がより自身の研究に近そうなものがあり,こちらを読んでみたいので,関連研究の論文も読み始めてしまう.これがKnowingです.Knowledgeだけでは,「関連研究を読めとは先生に言われていないので,読みませんでした」で終わってしまいます.みなさんはどちらが知識を獲得することを楽しんできると感じるでしょうか?

さて,説教じみてきたので早速本題に入ろうと思います.

あなたはまだその研究分野に精通していないため,以下の適切な指針がわからない状態です.

  1. 当該分野における教科書的論文はどれか?
  2. 当該分野におけるトレンドや一般的知識はどのようなものか?
  3. 当該領域における自身の関連研究を調査する上で適切なキーワードはなにか?

いずれも思いつきやアイデア力,創造性をいくら発揮しても適切な知識にはたどり着かない未知の指針であることは自明です.上記1,2,3はご自身の専門的知識が深まるほど身につく知識の順番を表しています.つまり,キーワードっていうのはかなりその領域に精通していないと,実は適切なキーワード利用は難しいのです.「?!」,そうです,気づきましたか?つまり,最初にキーワード検索をすること自体が生産性が低い行為になっているのです.「そんなばかな」と思うかもしれませんが,みなさん何か新しい領域を学ぶ際,キーワードから学びますか?違いますよね.ある程度体系だっている学問分野であれば,教科書から学ぶと思います.

しかしながら,研究というのは Cutting Edgeな学問であり,そもそも教科書のように体系化されていないものがほとんどです.つまり,先端的内容になればなるほど1の教科書指針は利用できません.では2のトレンドや一般知識はどのように獲得するかというと,論文を読むことです.その為にもGoogle Scholar等で論文検索をかける必要があるので,「やっぱキーワード必要じゃん!」と思ったあなた.このページのタイトルを読んでみてください.そう,AI時代の研究サーベイ方法です.昔は仕方がなく研究トレンドや当該領域の一般知識がなくても推測してキーワード検索かけるしかありませんでしたが,いまはAIがあります.対話的にAIに話しかけることで自身がやろうとしているジャンルや有名な論文,話題となっているトピック等の情報を知ることができます.

ChatGPTやBingを利用することで簡単に論文サーベイを開始することができます,さらにはそれらに特化したサービスもあります.例えば https://www.perplexity.ai/ は対話形式で根拠やウェブ上の情報に基づいた検索結果を提示してくれます.適切なキーワードがわからなくとも,このようにまずは対話をすることで,徐々に自分の研究がどの領域で扱われるトピックなのかがわかるようになります.

対話を重ねる中で,徐々に適切なキーワードが何なのかが明らかになってきます.

ここで,キーワード検索をかけることができるようになります.次に意識してほしいのは,検索をする場所です.「Google Scholarを使えばいいのでは?」と思うかもしれませんが,キーワードに引っかかる研究であればなんでもよい,というわけではありません.私達がほしいのは,キーワードに引っかかってかつ,みんなに引用されている,もしくは国際的にトップレベルにある論文を読まなければいけません.質の高い論文を読むことはとても大事なことです.そのような論文はジャンルを網羅するほどの綿密な参考文献があったり,極めて明確に記載された実験内容報告が記載されているなど,論文執筆に必要なノウハウが詰め込まれているからです.あなたの大事な時間を利用して論文をよむわけですから,なるべく質の高い論文を最初から選んでおく必要があるわけです.

では,どのようにして,質の高い論文を検索するか,についでですが,これは指導教員に相談してください.例えば私の研究室では ACM Digital Library で検索するように学生には指導しています.このあたりは研究領域により大きくことなります.

ここまで来たみなさんは,適切なキーワードで,質の高い論文を自らの力で読む機会を生成することができるようになりました.これができるようになるとあとのプロセスはかなり自動的になります.つまり,

  1. 近しい論文を見つける
  2. よく読む
  3. 関連研究で興味がある,または近い論文を参照する
  4. 以後2,3を繰り返す

だけでかなりその研究領域に対して知見を獲得することができるようになります.これが世にいう芋づる方式というもので,一つ引っ張り上げれば関連するものがたくさんついてくる,という高効率な論文サーベイ方法になります.

SNS等を見ていると,「爆速!!論文把握の方法」,「ChatGPTで論文要約最高!」等の見出しが目に入ることが多いと思います.もちろんAIを利用した論文要約はとても便利で活用すべきです.一方で,このページを読んでいるみなさんはこれから研究を始めようとしている学生です.そのまま鵜呑みにしてしまうと,しっかり論文を熟読する機会を自ら損失してしまいます.なにを言いたいかというと,Knowledge獲得を優先し,Knowingしなくなってしまう.ということです.

研究の要約を読むことで時短で研究概要は把握できますが,結局は詳細を削ぎ落としているから要約である,という事実を忘れてはいけません.「これおもろそうだな,結構研究に関係ありそうだな」そんなときには迷わず論文を熟読し,各節をしっかり読み込む癖も同時に身につけておきます.これによって細かな研究手順や,評価手法,グラフの作成方法やデータ提示手法等のお作法を学び取ることができます.もう一度,よく思い返してみてください,「AIで論文要約めっちゃ簡単!!」って言ってる人って,たくさん論文を普段から呼んでいる人が大声だしてアピールしていませんか?

つまり,そのような人と,学生のあなたはバックグラウンドがすでに異なる,つまり,ターゲットユーザが違うということです.十分に気をつけましょう.最初は熟読を心がけてください.

Tetsuaki Baba 2023/11/29 17:43

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  • 最終更新: 2024/02/27 09:14
  • by baba